- 2012/04/10 (Tue) 21:25:32 Ryuto - one minutes of ....
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one minutes of empress time
ギルドの気球より沼地と称される狩猟場に降り立ったが、ここはその外れの一角
視界に広がる景色は沼地という印象は無く
大きく草原が広がり、生い茂った毛足の長い緑の絨毯が風に揺られなびいている
辺りに生き物の声は無く、ただ風が起こす草の動きの音だけの世界
一見静かで何も無いように見えたが、微かに感じる何かの気配に二人は銃槍を構え臨戦体制に入った
神経を研ぎ澄まし、気配の位置を探る
見渡した景色の一部が少し歪み、異質な何かの存在を確信した
リュートと彼女は銃槍に弾を装填し目で合図を送り合うと、力強く踏み込んだ突きと砲撃を其処に向けて放った
銃槍を持つ手に感じる確かな手応え
「何か」の輪郭が次第にはっきりとし、そして「それ」は二人の前に完全に姿を表した
剛種霞竜・オオナズチ
その古竜の中でも異質な個体の狩猟依頼を受け、二人は共に銃槍を手に赴いていた
攻撃を受けた霞竜は辺りを見渡し、その動きを止めた
その隙にと、次の一撃を放つ為にガードを解いた瞬間
「!?」
リュートの体が後方へと飛ばされる
霞竜は姿勢を変えず長い舌でリュートを弾き飛ばしたのだ
さすがは剛種個体・・・受けた傷は大きく、すぐにリカバリーの回復薬を取り出す為にポーチに手を伸ばした
その時、異変に気付く
「開いている・・・?」
中身を手早く確認すると用意してあった秘薬が無くなっていた
リュートは霞竜による手痛いファーストコンタクトを受け、厄介だな・・・と独り呟くとガードを一段と堅くした
その様子を見ていた彼女も霞竜の動きに備える
姿を表した霞竜はその感情の読めない無機質な眼で
自分を狩ろうとする二人のハンターを確実に捉えていた
物を奪うトリッキーな舌の動きを警戒し、二人は霞竜の両側面へと展開
銃槍の特徴である重く堅いガードを軸に
時折繰り出す体当たりや毒の霧を防ぎ、砲撃と突きによって霞竜の体力を徐々に削っていく
霞竜の気配を探りながらのエリア移動を経て、ベースキャンプにほど近い場所へと狩猟場を移した
毒の沼が辺りに広がり、不気味な雲が空を覆う
更なる攻防を重ね、リュートが放った竜撃砲が霞竜の体勢を崩した
その時、彼女が動いた
ギルドより受け取った銃槍秘伝書
銃槍を極めんとする者が手にするこの書物
秘伝書に記された手順を踏まえ、手に持つ銃槍のリミットを解除
銃槍の先端から蒼い火が立ち昇る
・・・・・キィンッ・・・・・
甲高い音が静かな沼地の空に響いた
限定された1分という短い時間に銃槍の力を集約させ、限界を超えた性能を引き出す
「ヒートブレード」
彼女が激しく繰り出す圧倒的火力による攻撃が始まった
その猛攻に怯み、動けなくなっている霞竜を、彼女が手にしている銃槍・アクラグナークによる麻痺が更にその場に縛り付ける
アクラグナーク・・・
尾晶蠍アクラ・ヴァシムを模したそれは
彼女が地道な努力を費やして完成させた最高峰の麻痺属性を誇る銃槍
それがヒートブレードによって更なる真価を発揮する
それはまさしく、彼女がその場を支配する1分間のエンプレスタイム
彼女のハンターとしての実力と、立ち止まらない努力が剛種古竜すら凌駕する
その1分が終わりを告げる頃
猛攻に耐え兼ねた霞竜が為す術も無く、そのまま地に臥す事となった・・・
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狩猟を終え二人はギルドの気球が迎えに来る間、何気なく会話をしていた
・・・・・自らの「求めるもの」の為に一度は団を離れた彼女・・・・・
しばらく後、ギルドの気球が二人のそばに降り立った
「さぁリンリン、帰ろうか」
「うん♪ そだねぇ」
いつも通りの可愛らしい笑顔と明るい返事
・・・・・様々な場所を歩き
その「求めるもの」が此処にあった事を知った彼女は
こうしてまたリュートの傍にいる・・・・・
そして今も
これからも・・・
彼女はART★isanの仲間として、共に歩み続ける
episode 08 「one minutes of empress time」